なぜ英語力が、
訓練費を削減できるのか。
「カナダでアルバイトはできますか?」——よく聞かれる質問です。答えは「Yes」であり「No」です。すべての前提に、英語力があるからです。
「カナダでアルバイトはできますか?」への、正直な回答
訓練生予備軍の方から、よくこう聞かれます。「カナダでアルバイトはできますか?」
Q. カナダでアルバイトはできますか?
A. 「Yes」であり「No」です。
制度上は可能です。しかし現実には、できる人とできない人がはっきり分かれます。その境界線を作っているのが、英語力です。
レストランで注文を取る際、早口で聞かれた一言が理解できない。教官が発した質問の意図が汲み取れず、聞き返すこともできずに固まってしまう。これでは、アルバイトどころではありません。生活そのもの、そして訓練そのものが本末転倒になります。
正直に言います。スコアがあっても喋れない、理解できないというのは、日本人のお家芸です。IELTSやTOEICで高いスコアを持っていても、実際の現場で使いこなせない人は驚くほど多くいます。
これは能力の問題ではありません。多くの場合、スコアという「試験のための英語」と、現場で求められる「運用のための英語」が、まったく別物として扱われてこなかったことが原因です。
ネイティブでも難しい、Aviation Englishという専門言語
「英語が話せれば訓練で困らない」と思っている人がいますが、それは誤解です。実際のフライトスクールには、こうした注意喚起や掲示物が至るところに貼られています。
実際のフライトスクールにある安全掲示板。運用ルール、緊急時対応、ハザード報告の方法まで、すべて英語で掲示されている
実際にフライトスクールに掲示されている注意書き。安全に関する情報が、あらゆる場面で英語だけで示されている
機種別のチェックリスト、ATIS・Ground・Towerの周波数一覧まで、日常的に使う書類のすべてが英語で作られている(Pacific Rim Aviation Academy)
これらの意味、分かりますか?実際にどんな文章が使われているのか、イメージしやすいようにサンプルを作りました。
Warm Weather Flying
Climb at a higher airspeed to get more engine cooling.
Running the mixture richer will also help cool the engine.
Watch your oil temperature closely. If it’s getting close to the red line, change what you are doing or come back and land.
Plan to land at the numbers instead of further down the runway.
※実際の掲示内容を参考に再構成したサンプルです
単語自体は、決して難しくありません。”climb”、”cooling”、”watch”、”land”——一つひとつを見れば、中学校レベルの単語がほとんどです。
実はこれらの文章、単語レベルで見れば英検3級程度の英語しか使われていません。難しいのは単語ではなく、「運用の文脈でどう組み合わさっているか」を瞬時に理解できるかどうかです。
英語力の差は、そのまま訓練費の差になる
「英語力が訓練費に直結する」というのは、精神論でも例え話でもありません。実際に起きるプロセスを追っていくと、そのメカニズムがはっきり見えてきます。
教官の指示が聞き取れない
聞き返せず、曖昧なまま実行
操作ミス・課題の未達成
同じ課題を繰り返す(re-fly)
追加フライト
訓練費 増加
教官の指示を正確に理解
分からなければその場で聞き返す
一度で正確に実行
次の課題へ進む
訓練が前進
訓練費 削減
ポイントは、この差が「1回のフライトあたり数万円」という単位で積み重なっていくことです。1課題で発生する差はわずかでも、全課題を通じて積み上がれば、総額で数十万円から、時には数百万円規模の差になります。
英語力の不足は、単なる「聞き取れない」で終わりません。re-fly、追加レッスン、訓練期間の長期化という形で、そのまま訓練費の増加に変換されます。詳しくは「訓練費は削るな!未来の無駄を削れ!」で解説している”無駄”の正体の一つが、まさにこれです。
そして、これは大袈裟な話ではなく、安全にも直結します。カナダの教官が実際にこう言っていました。
“ATC makes SAFETY.”
少しレイヤーは異なりますが、英語力がATC(管制交信)に繋がり、そのATCが全体の安全と秩序を生み出す、という意味です。訓練費の話も、安全の話も、根っこは同じ英語力というたった一つの変数に行き着きます。実際にこの教官と交わした、日没が迫るクロスカントリーでのやり取りはこちらの記事で詳しく紹介しています。
差を埋めるのは、基礎英語力と「Eager精神」
ネイティブでも難しいAviation Englishという専門言語。この壁を越えるために必要なのは、実は特別な才能ではありません。基礎英語力と、Eager精神の2つです。
基礎英語力(文法・語彙)は、才能や環境の問題ではなく、YouTubeや教材を使えば今日からでも伸ばせます。時間をかければ、誰でも一定のレベルまでは到達できます。
問題は、その先です。専門性の壁を越えるのは、基礎英語力だけでは足りません。必要なのは、「分からないことをそのままにしない」という姿勢——これを、この記事では”Eager精神”と呼びます。
“Eager Beaver”という表現
英語には”Eager Beaver”という慣用句があります。直訳すると「意欲的なビーバー」ですが、実際には「熱心で、勤勉で、進んで物事に取り組む人」を指す表現です。
ビーバーは、休むことなくダムを作り続ける動物として知られています。誰かに命令されているわけでもなく、自ら黙々と、そして貪欲に手を動かし続ける。この習性が、そのまま「意欲的な人」を表す比喩になりました。
Eager精神とは、まさにこの姿勢のことです。分からないことがあれば、恥ずかしがらずに聞き返す。理解できるまで、貪欲に食らいつく。誰かに教えられるのを待つのではなく、自分から取りに行く。
実際にカナダの教官が、訓練生に向けてこう言っていました。「完璧な英語を話す必要はない。理解しようとすること、話そうとすることが大事だ。そして分からなかったときは、”Say again please”や”Can you teach me again”と言えばいい」。この一言に出会った実際のエピソードはこちらの記事で紹介しています。
「英語が大事」だと分かった瞬間に、実際に動けるかどうか。この差は、能力の差ではなく行動を測定に使っているかどうかの差です。詳しくは「失敗の戦略と成功の科学」で、情報を知って終わる人と、動く人の違いを解説しています。
準備不足は、出発前にすでに始まっている
ここまで見てきた「英語力が訓練費と安全に直結する」という話は、実は目新しい発見ではありません。多くの人が薄々気づいていながら、出発前にきちんと向き合わずに渡航してしまう、という構造的な問題です。
パイロット留学の失敗は、カナダに到着してから起きるわけではありません。多くの場合、それは出発前にすでに始まっています。
英語力を「現地でなんとかなる」と楽観視したまま渡航する人は後を絶ちません。しかし、これまで見てきた通り、英語力の不足は再訓練・追加レッスンという形で確実に訓練費に跳ね返り、時には安全そのものにも影響します。「行けば何とかなる」という期待だけで英語力の準備を怠ることは、出発前にできる、最も重要な判断を放棄していることと同じです。
出発前にしかできない判断
英語を「読む・聞く」だけでなく運用できるか——これは実際に、失敗する人としない人を分ける出発前チェックリストの一項目です
この「出発前の事前準備」という構造そのものについては、「失敗とドロップアウトから学ぶ、現実的ルート設計」で詳しく解説しています。英語力の準備不足は、その中でも特に見過ごされがちな要素の一つです。
まず、自分のポジションを把握すること
「何から始めればいいか分からない」という人へ。最初にやるべきことは、上達することではありません。まず、自分が今どれだけ理解できて、どれだけ理解できないのか、そのポジションを把握することです。
これはパイロットで言うポジションレポートと同じです。管制やATCに対して、今自分がどこにいるかを正確に報告する。目的地に向かう前に、まず自分の立ち位置を知ることが最優先されます。
目的地(訓練で困らないレベル)に向かう前に、まず今の自分の位置を正確に知ること。これができなければ、どんなルートを飛ぶべきかも決められません。
上達を焦る必要はありません。焦って的外れな対策をするより、まず現在地を正確に測る。これが、遠回りに見えて実は一番の近道です。
今日からできること
ポジションを把握したら、次は動くだけです。特別な教材も、高額なサービスも必要ありません。今日から、無料で始められることが3つあります。
目的は「上達」ではなく「測定」です。航空英語系のチャンネル、ATC交信を扱った動画を見て、今の自分がどこまで聞き取れるかを確認する。理解できない部分こそが、次にやるべきことを教えてくれます。
完璧に理解する必要はありません。「本を買う」という行動そのものが、Eager精神の第一歩です。英語力の証明ではなく、覚悟の表明。手元に置いておくだけでも、意味があります。
ChatGPTやClaudeのようなAIを使えば、24時間いつでも「Say again please」ができる相手がいます。人に聞き返すハードルが高くても、AIになら気軽に、何度でも聞き返せる。現代ならではの解決策です。しかもAIは何をしても怒ってきませんし、そこらの塾講師よりも余計な一言もなく、淡々と教えてくれます。
この3つに共通しているのは、完璧を目指さない、今日から始められる、行動そのものに意味があるということです。上達は結果であって、目的ではありません。
英語力は、「話せるかどうか」の話ではありません。
秩序と安全を守れるかどうか、という話です。
そしてその差は、そのまま訓練費という数字になって跳ね返ってきます。
今日からできることをお伝えしましたが、それでも一人で継続するのは簡単ではありません。誰かに見てもらえる環境、正しい方向に導いてくれる存在がある方が、圧倒的に続けやすいのが現実です。
航空座学・航空英語・基礎英語をまとめてサポート
弊社のHeading Indicatorプログラムのサポート内容には、合計45時間の航空座学・航空英語・基礎英語が含まれており、提携フライトスクールからも高い評価を受けています。
基礎英語
「今日からできること」を一人で続けるだけでも十分意味がありますが、それを構造化されたサポートの中でやれば、遠回りせずに済みます。
あなたの力を必要とする人、地域、社会が、
世界にはまだまだあります。
これは就職の斡旋ではなく、正しい設計の相談です。英語力の伸ばし方、訓練費との向き合い方、今の自分のポジション——合わないと判断すれば、正直にそうお伝えします。
LINEで相談する 友だち追加後、いつでも質問できますLast Updated: 2026.08.12








