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カナダで訓練生のフライトに同乗

カナダでPPL取得後の訓練生のPICフライトに同乗するSMART FLIGHT代表谷口一貴

News from Canada #2

PPL取得後、PICとして
飛ぶ彼の隣に座った。

約2ヶ月でPPLを取得した訓練生の速報はこちら
この記事は、その後のフライトに同乗した記録です。

約70時間・約2ヶ月。この数字の意味

彼は約70時間のフライトを経て、約2ヶ月でPPLを取得しました。

ここで一つ、明確にしておきたいことがあります。65時間だから優秀、75時間だから劣っている、という話ではありません。飛行時間は教官の判断によって決まります。着実な技術習得のために必要なフライトを積み、教官が「準備ができた」と判断した結果が約70時間だったということです。

これは訓練生と教官の相互の信頼関係と理解がなければ成し得ない結果です。

そして、約2ヶ月という期間を可能にしたのは事前の座学です。渡航前に日本語で理解を深め、最後に英語で触れておく。この二段構えが、現地での予習復習の時間を大幅に軽減し、フライトの密度を根本から変えました。

事前学習は理解を深め、理解は訓練を効率化し、効率化は無駄を削減する。私たちが「訓練費は削るな、未来の無駄を削れ」と言い続けてきたこと、そして「複利で目指すパイロットの道」で書いたこと。それが今回、一人の訓練生の結果として目の前に現れました。

POINT

飛行時間の多寡は優劣ではありません。教官の判断による着実な技術習得の結果です。そしてこの期間を可能にしたのは事前座学による理解と、訓練生と教官の信頼関係です。

PPL取得後にPICとして操縦するTango君と同乗する谷口一貴

PPL取得後、PIC(機長)として操縦するTango君の隣で。

Tango君と空の上で

この記事では、訓練生のイニシャルがTであることから、フォネティックアルファベットに倣って「Tango」と呼びます。

Tango君がPICとして操縦する飛行機の右席に座った瞬間、懐かしい感覚が全身を包みました。この掴みどころのない緊張感が懐かしい。エンジンの振動、ヘッドセット越しの管制のやり取り、窓の外に広がるカナダの大地。自分がアメリカで訓練していた頃の空気が一気に蘇ってきました。

彼の操縦を隣で見ていて感じたのは、スムースなコントロールと、慎重すぎるとも取れる所作です。

これはPPLを取得したばかりの段階としては、むしろ正しい。基礎が身に染みついているからこそ、一つ一つの操作を丁寧に、確認しながら進めることができる。派手さはなくても、堅実さがある。

この基礎を忘れると、人は自己流になります。そして訓練がうまくいかなくなった時に、環境や教官や天候のせいにする。他責です。Tango君にはそれがなかった。自分の操縦に対して、静かに、しかし確実に向き合っていました。

POINT

慎重さは未熟の証拠ではありません。基礎が染みついている証拠です。この慎重さを忘れた時、人は自己流に陥り、うまくいかない原因を自分以外に求め始めます。

合理的感情論

私は送り出す人一人一人に直接会っています。

本来「ビジネス」という観点においては、正直これは間違っています。なぜか。対等性が崩れるからです。顔を合わせ、人柄を知り、背景を理解してしまえば、純粋なビジネス上の判断が難しくなる。合理的ではない。

しかし私たちは、彼ら彼女らの未来を預かり、創出し、そして将来のインフラを微力ながら構築していると考えています。だからこそ泥臭く対面で会う。利益や事業としての合理性よりも、私は「合理的感情論」を優先します。

合理的感情論とは、感情を排除するのではなく、感情を判断材料に組み込んだ上で合理的に動くということです。ビジネスの教科書には載っていません。しかし、人の未来を預かる仕事には、この感覚がなければ成立しないものがあると私は信じています。

だからこそ今回、Tango君と数ヶ月ぶりに会い話した時に、成長という言葉より先に、彼の目と姿勢に「覚悟」が見えました。

正直に言います。フライト中は目から鼻水が出るのではないかと、終始我慢していました。

何より、私たちが送り出した訓練生を責任を持って育ててくれている現地フライトスクールの教官から「素晴らしい訓練生だ」と言われた時は、心の底から感じました。

やってて良かった。誰かのために事業が生きてる。

これだからこそ、皆さんをサポートしてパイロットへ成長することを見届けるのは、この上ない喜びとやり甲斐を感じているのです。

勿論、全ての訓練生のフライトに同乗できるわけではありません。しかし、出発前に必ず会うこと、何度も対話を繰り返すことで、訓練に集中できる環境と心構えを提供している実感を、今回改めて確認できました。

教官という生き方

今回話した教官の1人に、こんな方がいました。個人情報の関係から詳しいことは書けませんが、数年前まで「食うに困らない職業」についていた方です。

現在は日本語でいう「中年」にあたる年齢ですが、その安定した食と未来を自ら手放し、操縦教官としての道を選び、訓練を開始し、今は過去の仕事と何一つリンクしない職に誇りを持ち、一人一人の訓練生と向き合っていました。

これこそが、私が日頃から言っている「年齢は関係ない。必要なのは覚悟だ。」ということなのです。

勿論、安易に「ライセンス取れます!」「就職できます!」だなんてジャックダニエルを100本もらえても言いませんが、要は彼は相当な努力と覚悟を貫き通し、その経験を次の世代に教えているのです。(カナダで操縦教官を目指すには

経験を価値に変え、価値を経験にしていく。

私はこのサイクルをそう呼んでいます。彼はまさにそれを体現していました。

人の経験や成功体験なんて、所詮一つの仮説や結論ありきの都合のいい話に過ぎません。しかし彼を見ていると、心の底から滲み出る「熱意」と「覚悟」を感じました。

カナダのフライトスクール教官とSMART FLIGHT代表谷口一貴

兄貴!!ここにいたのかよ!!(服装が完全に一致してしまった。)

彼に「That’s why there is a lot of opportunities in Canada.」と言うと、一言だけ返ってきました。

“Absolutely.”

「だからカナダにはチャンスが溢れている」——その通りだ、と。

カナダのフライトスクールでTango君と担当教官がセスナの前で撮影

Tango君と担当教官。訓練機の前で。

ATC makes SAFETY. English makes safe.

Tango君の教官が話していた言葉に、痺れました。

Instructor

“ATC makes SAFETY.”

管制通信が安全を作る。

Randy

“English makes safe.”

英語が安全を作る。

私が日本で言い続けてきたことと、カナダの現場で教えている教官の言葉が、示し合わせたわけでもなく完全に一致しました。レイヤーは違います。ATCは管制、Englishは言語。しかし本質は同じです。コミュニケーションが安全を作る。

さらに彼はこう続けました。

“Don’t need to speak perfect English. Coz I’m also from abroad, so just try to understand, try to speak.”

完璧な英語は必要ない。自分も海外から来た人間だ。だからまず理解しようとすること、話そうとすること。彼自身が非ネイティブの教官として、自分の経験からそう言っているのです。

IELTSやTOEICのスコアが安全を作るのではありません。学ぶ姿勢と理解する姿勢が安全を作るのです。わからない時は「Say again.」と言えばいい。それはプライドの問題であって、英語力の問題ではありません。

POINT

スコアが安全を作るのではない。「理解しようとする姿勢」と「わからない時にSay again.と言える勇気」が安全を作る。これは英語力の問題ではなく、スタンスの問題です。

社会性という証拠

Tango君がこう言いました。

Tango

「本当に事前の学習も感謝しています。何よりこんな恵まれた環境、教官、ディスパッチャーなど皆さんプロで素晴らしく、学ぶことが多くありました。」

この言葉を聞いた時、私は驚きを隠せませんでした。

なぜか。PPLを取得したばかりの訓練生が「取れました!」ではなく、環境と周囲の人間に感謝を向けている。教官だけでなく、ディスパッチャーにまで言及している。これは教えたことではありません。彼が主体的に感じ、行動に移していることです。

フライト前にGFAチャートと航空図を確認するTango君

フライト前、GFAチャートと航空図を確認するTango君。誰に言われるでもなく、自ら準備する。

私がよく「パイロットには社会性が必ない」と発信すると、業界のグレートな人達や、神格化された構造に酔いしれてる人達や、その取り巻きのファンから、火炎瓶を投げ込まれる勢いで否定されます。

しかしここにきて改めて確信しました。正しかった。

彼を見て感じていたのは、私が自称「社会不適合者」としてアメリカで訓練していた時と比べて、圧倒的なコミュニケーション力と環境適応能力でした。

私はパイロットには社会性、広い視野、決断力、判断力、適応力が絶対的に必要だと考えています。それらは既に備えられていることもあれば、訓練を通じて培われていくものでもあります。Tango君は、その両方を持っていました。

パイロットとは、特別な才能を持った特別な人間ではない。特別な努力を正しい方向に積み上げた、社会性を持った普通の人間だ。

心配しないでください

ここまで読んで「自分にはTango君のようなコミュニケーション力はない」「そこまでの覚悟が持てるかわからない」と感じた方がいるかもしれません。

心配しないでください。

100人いればそれぞれの適性や考えや思想があります。Tango君のやり方が正解で、それ以外が不正解という話ではありません。

まずは安全と相互理解を基軸とした信頼関係の構築を一番にしてください。教官との信頼関係、フライトスクールとの信頼関係、そして私たちとの信頼関係。それさえあれば、訓練は必ず前に進みます。

あなたのペースで、あなたの覚悟で。それでいいのです。

まだまだ語れます

書きたいことや気づいたことは、まだまだあります。聞きたいですか? 10日は語れますよ。

それくらい彼は濃い経験と新たな道を見つけ、そして何より私自身が再度気付かされました。これからどんなサービスやサポートが訓練生を支え、提携フライトスクールとの関係構築に役立つかを考え直す、素晴らしい機会となりました。

Hey! Instructors!!
and Dispatcher! Mechanics!
Office and Crew!

I really love you guys ALL !!

就職の斡旋ではなく、正しい設計の相談です。
合わないと判断すれば、正直にそうお伝えします。

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この記事の著者

谷口 一貴

谷口 一貴

株式会社SMART FLIGHT 代表取締役

元海上自衛隊潜水艦乗り。航空学生を3度受験するも合格叶わず。退官後に単身渡米し操縦免許を取得。自身の飛行時間は200時間ながらも、カナダ・アメリカ・オーストラリア・ニュージーランド・フィリピン・マレーシア・シンガポールを含む世界100校以上のフライトスクールを直接視察。海外訓練の費用メリットが帰国後の書換や免許取得後のコスト構造で消えるという現実を自ら経験し、さらにパイロット不足の本質的な原因が「免許制度と採用現場の乖離」にあることを現場で確認。訓練から就職まで一貫して設計するトータルコーディネートの必要性を確信した。現在までに30回以上のカナダ渡航を重ね、航空会社・フライトスクール・空港関係者との信頼ネットワークを構築。累計40名以上の訓練生を送り出し、国内外の航空会社で活躍するパイロットを輩出している。カナダのビザ制度にも精通。

Last Updated: 2026.08.03

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