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カナダ訪問を終えて。2026年8月訪問

レッドディア空港で整備のため一時帰投したCL-215ウォーターボマー、BC州山火事対応
現地レポート・一次情報

カナダ訪問を終えて

見えているものが、すべてではない。

2026年8月訪問

2026年7月29日から8月21日まで、私はアルバータ州を中心にカナダに滞在していました。目的は一つではありません。提携先フライトスクールの定期訪問、新規のチャーター会社やMedevac事業者との対話、そして今回は短期留学プログラムに参加した方との現地同行も含まれています。

滞在期間 2026年7月29日〜8月21日(24日間)
訪問エリア アルバータ州および近隣
訪問先 フライトスクール4校・航空関連企業3社

滞在中、BC州では大規模な山火事が拡大を続けていました。アルバータ州からも応援のクルーと機体が出動しており、その様子を実際にこの目で見る場面もありました。制度やニュースの見出しではなく、今まさに現場で何が起きているかを、この記事では書いていきます。

3年前と今の事情が違うのはもちろんですが、去年とさえ、状況はまるで違っていました。だからこそ、毎年この足で確かめる意味があります。

この記事は、いわゆる「視察レポート」ではありません。何を見て、誰と話し、何を感じ、そして何が今後不要になり、何が必要になったのか。良いことも、厳しいことも、包み隠さず書いていきます。

レッドディアで出会った、242号機

滞在中、レッドディア空港に立ち寄った際、一機のウォーターボマーが駐機しているのに出会いました。機体番号242。BC州で拡大していた山火事の応援のため、アルバータ州から出動していた機体の一つです。整備とクルーの休息のため、一時的にベースへ戻ってきていたところでした。

レッドディア空港に一時帰投したCL-215ウォーターボマー242号機
整備とクルーの休息のためレッドディア空港に一時帰投していたウォーターボマー(2026年8月撮影)

ここレッドディア空港は、Air SprayやBuffalo Airwaysが拠点を置く、カナダの山火事対応を長年支えてきた前線基地の一つでもあります。この空を飛ぶ人たちの世界がどういうものか、統制と正確な判断がなぜ命を分けるのかは、以前この記事で詳しく書きました。

ニュースの見出しでは「山火事、拡大」の一行で終わる出来事の裏側に、こうして日々出動し、戻り、また飛んでいく人たちがいます。制度の話や統計の話をする前に、まずこの現実があることを、私は忘れないようにしています。

4校のフライトスクール、3社の航空企業を訪問して

今回の滞在では、提携先を含む4校のフライトスクールと、チャーター会社やMedevac事業者など3社の航空企業を訪問しました。それぞれの訪問先での情報収集はもちろんですが、今回もっとも印象に残ったのは、どの訪問先からも「あなたの事業は素晴らしい。人のためになっている」と言われたことでした。

カナダのフライトスクールで教官から指導を受ける短期留学参加者、機体を前にメモを取る様子
教官から直接指導を受ける短期留学参加者(2026年8月撮影)
カナダのフライトスクールで機体の翼を点検する短期留学参加者と教官
主翼の点検を実際に手を動かして学ぶ様子(2026年8月撮影)

私たちは日本では、一見ありきたりな留学エージェントに見られがちです。仲介手数料を取るだけの事業だと思われることも少なくありません。しかし中身はマネジメントでありコーディネートです。移民政策、訓練制度、地政学、日本との免許制度の違い、訓練設計まで、多岐にわたる情報を横断的に扱っています。今回同行した短期留学の参加者も、それを現地で肌で感じていました。

なぜ、それが伝わるのか

今回訪問したあるフライトスクールでは、こんな話を聞きました。「多くの国からエージェント経由で訓練生が来るが、エージェント自身が現地に来ることはまずない。誰が責任を持ち、どこまでが責任の範囲なのか明確にならないまま訓練生だけが到着し、ケアもない。エージェントのサイトを見ても代表や担当者の顔や名前がなく、実在する会社なのかさえ怪しい」と。

これは特定の会社を指しているわけではなく、業界の構造として現地が感じている懸念です。顔が見えない、現地に来ない、責任の所在が曖昧。だからこそ、現地に足を運び、対話をし、代表自身が顔を出すという当たり前のことが、当たり前でなくなっているのだと思います。

私は世界100校以上のフライトスクールを直接視察し、30回以上カナダに渡航してきました。だからこそ、格納庫の奥や整備の現場にまで入り込んで話を聞ける関係を築けています。これは正直、堂々と差別化のポイントとして書かせてもらいます。

エージェントを選ぶときに、聞いてみてほしいこと

  • 代表はどんな方ですか?
  • 定期的に現地を訪問していますか?最後に訪問したのはいつですか?
  • 訓練中に何かあったとき、誰が、どこまで責任を持ちますか?

就職の斡旋ではなく、正しい設計の相談です。合わないと判断すれば、正直にそうお伝えします。それでも、この当たり前の質問だけは、誰であっても一度はしてみてほしいと思います。

Medevacで聞いた、Step by Stepという考え方

今回、あるMedevac事業者を訪問し、話を聞く機会がありました。カナダのパイロット不足は深刻です。それにもかかわらず現場が繰り返し口にするのは、「多くの若者が、経験も積まないうちからすぐにエアラインを目指したがる」という強い警鐘でした。

教官もチャーターもMedevacも経ずに、いきなりエアラインの操縦桿を握りたがる。これは技術以前に、積むべき経験そのものを飛ばそうとしている状態です。パイロット不足が叫ばれる一方で就職できない人が後を絶たない現実は、この段階の飛ばし方と決して無関係ではありません。

カナダという国は、Step by Stepでキャリアを積み上げていく国です。教官、チャーター、そしてMedevacのような現場を経て、初めてエアラインへとつながっていく。その過程にこそ、積むべき経験があります。「現役はベテランの猛者しかいない仕事ですが、若い人たちにもぜひ積極的に挑戦してほしい。そこで学べることは、必ず将来の経験になる」と、その方は話していました。

Medevacがどれほど重い責任を背負う仕事か、Always Readyであり続けるとはどういうことかは、以前書いた記事の通りです。

Medevacパイロット記事サムネイル 本物のAviatorシリーズ #2 Medevacパイロットという生き方

今回訪問したMedevac事業者は、政府契約の関係で名前や写真の公開ができません。これは珍しいことではなく、以前Buffalo Airwaysをイエローナイフで訪問した際も、格納庫や待機室の撮影を断られたことがあります。それだけ、現場が実務的な緊張感の中で動いているということでもあります。見せられないものの向こうにこそ、現場の本質があることも少なくありません。

就職率という数字だけを見て段階を飛ばそうとする人には、この積み上げの意味はなかなか伝わらないかもしれません。しかし、この過程を経た先にしか立てない場所があることを、現地で改めて感じました。

スーパーで肉を見て、ピザを食べる意味

欧米では、コンサルティングは特別なものではありません。1回の相談に数万円から数十万円が普通にかかります。他人の時間は無料ではなく、無限でもない。その対価として、有益な情報が返ってくる。それが当たり前の感覚として根付いています。

カナダのスーパーマーケットに並ぶAAAビーフの価格表示
現地スーパーの精肉コーナー(2026年8月撮影)
カナダで食べたハンバーガーとフライドポテト
滞在中に食べたハンバーガー(2026年8月撮影)

私が書く記事は、まさにその有益な対価のつもりで書いています。現地へ足を運び、対話をし、スーパーの物価を見て、現地でピザやハンバーガーを食べる。傍から見れば、無駄で非効率だと思われるかもしれません。ですが、もし効率優先のネットとAI社会だけですべてが完結するのであれば、世の中のパイロット不足は白亜紀にはとっくに解消されていたはずです。

情報を集め、分析し、検証するには、とてつもない労力と時間がかかっています。私の記事が今、無料で読めていること自体が、本来はおかしいのかもしれません。

それでも今は、この形で届けています。だからこそ、一文字一文字に、現地で見て、聞いて、確かめたものを詰め込むようにしています。

短期留学に参加した人と、現地で過ごして見えたもの

今回の滞在では、短期留学プログラムに参加した方と現地で行動を共にする時間もありました。すでに訓練を進めている送り出し済みの訓練生と、短期プログラムの参加者が実際に顔を合わせて話す場面もあり、私自身もその対話に立ち会いました。

フライトスクールのオフィスで送り出した訓練生と短期留学参加者が対話する様子
すでに訓練を進める訓練生(左)と短期留学プログラム参加者(右)の対話(2026年8月撮影)

実際に現地で寝食を共にし、対話を重ねる中で見えてきたことがあります。事前に想像していた不安の多くは、実際に現地に来てみると輪郭が変わること。逆に、事前にはまったく想定していなかった部分でつまずく人がいること。座学やオンラインの情報だけでは埋まらない部分が、間違いなく存在します。

今後、何が本当に必要で、何が実は不要なのか。今回の同行を通じて、これまで以上に解像度高く見えてきました。この学びは、今後のプログラム設計に反映していきます。

制度や費用の話をどれだけ丁寧にしても、最終的に現地で戸惑うのは、人と人との距離感だったり、ちょっとした生活のリズムだったりします。そこに寄り添えるかどうかが、結局のところ一番効くのだと、今回も改めて感じました。

カナダで教官や訓練生と共にした食事の様子
現地の教官・訓練生と共にした食事の一コマ(2026年8月撮影)

現地では、こうした教官や訓練生との会食も大切な情報源であり、安全性の向上にも繋がります。オフィスや訓練の場では出てこない本音や小さな違和感が、食事の席で自然と言葉になることが少なくないからです。

訪問の合間に立ち寄った、航空博物館で考えたこと

視察の合間、レッドディアから車で1時間ほどの航空博物館に立ち寄りました。銀色の機体、時代ごとに並ぶプロペラ機。これといった予定ではありませんでしたが、こういう時間も私は大切にしています。

アルバータ州の航空博物館に展示されたDC-3と歴代の機体
訪問の合間に立ち寄った航空博物館(2026年8月撮影)

パイロットになるということは、操縦系統やシステムの扱い方を覚えることではありません。本質は「飛行機を知ること」です。博物館へ足を運び、歴史を学ぶ。どんな飛行機が過去にいて、今もどこかで飛んでいるのか。それを知ることそのものが、パイロットという仕事の土台になります。

私はパイロットを目指す上で必要な要素として、英語力や社会性をよく挙げます。これらは定量的に測れる、いわば入口の条件です。しかし定性的な観点で言えば、圧倒的に大事なのは「飛行機が好きかどうか」です。

数字で測れる条件をどれだけ満たしていても、機体そのものへの興味がなければ、この道は長く続きません。逆に、その興味さえ本物であれば、足りない部分は後から積み上げていけます。

日本にも、素晴らしい航空博物館がいくつもあります。例えば成田空港に隣接する「航空科学博物館」(千葉県)、実機やコックピットを間近で見られる「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館」(岐阜県)などは、その代表格です。カナダに来る前に、まずは近くの博物館に足を運んでみてください。

まとめ:見えているものが、すべてではない

今回、7月29日から8月21日までの24日間、アルバータ州を中心にカナダを訪ねました。フライトスクール4校、航空関連企業3社。BC州の山火事対応で一時帰投していたウォーターボマー。Step by Stepの重みを語ってくれたMedevacの現場。スーパーの物価、教官や訓練生との食卓、そして訪問の合間に立ち寄った航空博物館。

どれも、ネットで検索するだけでは出てこない情報です。制度の条文や、就職率という一つの数字だけを見ていては、絶対に見えてこない景色でした。

3年前と今も違う。去年とさえ、まるで違う。だからこそ、毎年この足で確かめる意味があります。

見えているものが、すべてではありません。見えない部分にこそ、本質があることの方が、実は多いのです。

今回得られたことは、この記事だけでは書ききれません。今後の記事や、個別のご相談の中で、少しずつお伝えしていきます。

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就職の斡旋ではなく、正しい設計の相談です。合わないと判断すれば、正直にそうお伝えします。

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この記事の著者

谷口 一貴

谷口 一貴

株式会社SMART FLIGHT 代表取締役

元海上自衛隊潜水艦乗り。航空学生を3度受験するも合格叶わず。退官後に単身渡米し操縦免許を取得。自身の飛行時間は200時間ながらも、カナダ・アメリカ・オーストラリア・ニュージーランド・フィリピン・マレーシア・シンガポールを含む世界100校以上のフライトスクールを直接視察。海外訓練の費用メリットが帰国後の書換や免許取得後のコスト構造で消えるという現実を自ら経験し、さらにパイロット不足の本質的な原因が「免許制度と採用現場の乖離」にあることを現場で確認。訓練から就職まで一貫して設計するトータルコーディネートの必要性を確信した。現在までに30回以上のカナダ渡航を重ね、航空会社・フライトスクール・空港関係者との信頼ネットワークを構築。累計40名以上の訓練生を送り出し、国内外の航空会社で活躍するパイロットを輩出している。カナダのビザ制度にも精通。

Last Updated: 2026.08.27

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