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操縦訓練前に実機に触れる必要がある理由|エアロスバルでの実機座学講習

熊本県阿蘇の場外離着陸場に駐機するエアロスバルJA3689の機体
Real Aircraft Briefing / Aso, Kumamoto

座学だけでは、機体は分からない。

熊本・阿蘇の場外離着陸場で、エアロスバル(JA3689)を使った実機講習を実施しました。

まず最初に、本記事の実機講習は、株式会社AGL 高崎様のご厚意により実現しました。心より感謝申し上げます。

なぜオンライン座学だけでは足りないのか

カナダでの操縦訓練を目指す方は、渡航前に全員がオンラインでGround Schoolを受講します。PPL(自家用操縦士)から入る方も、CPL(事業用操縦士)やATPLを見据えて渡航する方も同じです。航空法規、気象、航法。知識としては、これで十分に頭に入ります。

ただし、そこで得られるのは「知識」までです。実際に機体を目の前にして、どこにどのスイッチがあり、どういう手順で始動し、操縦桿がどう動くと機体がどう反応するのか。この「動き」の理解は、画面越しの座学だけでは体系立って積み上がりません。

エアロスバルJA3689のコックピットで計器盤を指しながら説明を受ける訓練生

実機のコックピットで、計器盤を一つずつ確認しながらの座学。

今回、熊本・阿蘇の場外離着陸場で行った実機座学講習は、この「知識」と「動き」の間を埋めるためのものでした。訓練を開始する前にこの理解があるかないかで、現地での訓練効率、そして操作の吸収スピードは大きく変わります。

正直に言うと、オンライン座学だけで「準備は万端」だと思っている人は注意が必要です。知識と、実際に機体の前に立って手を動かす経験は、別物です。この差を渡航前に埋められるかどうかが、現地での立ち上がりの速さを左右します。

阿蘇の場外離着陸場で行った実機講習

今回の実機座学講習は、熊本県・阿蘇の場外離着陸場で行いました。実際にカナダでの訓練を控える訓練生が、渡航前の最終準備として実機に触れる機会です。

阿蘇の場外離着陸場でエアロスバルJA3689を前に説明を受ける訓練生とスタッフ

機体JA3689を前に、オーナー様から直接お話をうかがう時間。

内容は、座学の延長というより「体で確認する」時間に近いものでした。コックピットに座り、計器盤の配置を一つずつ確認し、始動から離陸までの手順、そして各スイッチ・レバーが機体のどの動きに対応しているのかを、実機を前にしながら説明を受けます。

主な内容

  • コックピット内の計器配置・スイッチ類の確認
  • エンジン始動から離陸までの一連の手順の説明
  • 操縦系統(操縦桿・ラダー等)と機体の動きの対応関係
  • 体験搭乗による、実際の飛行感覚の確認

オンラインの座学で得た知識と、目の前にある実機の動きが結びついた瞬間、理解の深さが変わります。これは、渡航してから現地で初めて体験するのとでは、意味が大きく異なります。

説明は、コックピットの中だけにとどまりません。主翼や尾翼といった機体各部についても、実際に見て、触れながら構造を確認しました。

エアロスバルJA3689の主翼構造を実際に見上げながら説明を受ける訓練生
エアロスバルJA3689の尾翼付近を指しながら構造を説明する様子

主翼・尾翼の構造も、実際に見て、触れながら確認しました。

エアロスバル(JA3689)という機体について

今回の実機座学講習で使用したのは、富士重工業(現SUBARU)が開発・製造したFA-200 エアロスバルという機体です。「エアロスバル」という愛称は、当時富士重工業が生産していた自動車のブランド「スバル」からとられています。

1965年8月12日に初飛行し、1986年に生産を終了するまでに、試作機を含めて約299機が製作されました。日本で唯一、量産された民間の国産小型機という位置づけの機体です。

注目すべきは、その飛行性能です。エンジンには自動車のスバルと同じ水平対向(BOXER)方式が採用され、2人搭乗時に限りループやロールといったアクロバット飛行が可能でした。当時のセスナ172やパイパーPA-28といった同時代の練習機にはない特徴であり、単なる移動・練習用の機体ではなく、安定性と操縦性を兼ね備えた「タフな」機体として設計されていたことがわかります。

FA-200 エアロスバル 概要

製造 富士重工業(現SUBARU)
初飛行 1965年8月12日
生産終了 1986年
生産機数 約299機(試作機含む)
エンジン ライカミング製 水平対向4気筒
特徴 アクロバット飛行(2人搭乗時)対応

初飛行から60年近くが経った現在も、国内外で現役として飛び続けている機体があります。今回ご協力いただいたJA3689も、その1機です。

機体が新しくても古くても、学ぶべき基礎は変わらない

現代のフライトスクールで使われる訓練機の多くは、グラスコックピット(液晶ディスプレイに各種情報を集約表示する計器システム)を採用しています。一見すると、JA3689のようなアナログ計器の機体とは全く別のものに見えるかもしれません。

グラスコックピット

姿勢・速度・高度・方位などの情報を、液晶ディスプレイに統合して表示する。

アナログ計器

同じ姿勢・速度・高度・方位の情報を、それぞれ独立した機械式の丸型計器で表示する。

↓ どちらも、表示しているのは同じ情報 ↓

姿勢・速度・高度・方位を読み、判断する

グラスコックピットは、確かに最新の表示方式です。しかし、そこに表示されている情報そのものは、アナログ計器が伝えてきたものと変わりません。表示の見た目が新しくなっただけで、読み取るべき基礎、判断すべき内容は同じです。

機体がビンテージであろうと最新であろうと、学ぶべき基礎は変わりません。今回JA3689というアナログ計器の機体に触れたことは、決して「古い機体の見学」ではなく、あらゆる機体に共通する土台を確認する時間だったといえます。

なぜこの機会が実現できたのか

今回の実機座学講習は、お金を払って手配できるサービスではありません。JA3689のオーナー様のご厚意により、費用は一切発生していません。機体の使用、そして体験搭乗まで、すべてご厚意によるものです。

JA3689の機内でオーナー様から搭乗前の説明を受ける訓練生

搭乗前、オーナー様から一つひとつ丁寧な説明をいただきました。

JA3689に搭乗し体験飛行を行う様子

説明の後は、実際にJA3689に搭乗しての体験飛行。

これは、当社がこれまで航空業界で積み重ねてきた活動と、周囲の協力があってこそ実現したものです。これまで築いてきた航空関係者との信頼関係。今回のご縁も、その延長線上にあります。

オーナー様とお話しする中で感じたのは、「飛行機に興味がある人や挑戦したい人に、機会を与えるべきだ」という思いでした。しかしそれには、まず挑戦のために自分から動かなければなりません。どんどん挑戦していくことが大事なのだ、と。

今回の機会は、誰にでも平等に与えられるものではありません。行動し、関係を築いてきた先にあった一つの縁です。

動いた人だけがこの機会に巡り会う

免許は「行動の証明」である

どれだけパイロットに憧れて勉強を頑張っても、情報を調べても、最初の一歩やきっかけがなければ何も始まりません。その機会を、通常の就職活動や大学受験と同じ感覚で待っている人が、実に多いのです。

タクシーの運転手になるにも、バスの運転手になるにも、F1レーサーになるにも、まずは運転免許があってこそです。そして、その免許に行き着くための「興味」と「行動」があってこそではないでしょうか。

就職率・取得率を先に考える人には、このステージは向かない

将来の目標のために動いた人は、今回のような機会に巡り会え、そして実際に触れ、経験を一つ積むことができました。就職率や取得率を先に考える人に、このステージは向かってきません。自ら行動することでステージは近づき、運、縁がめぐり一つのチャンスとなり、この経験が価値に変わるのです。

海外のライセンスは使えない、自費は就職できない——そう思い込み、発信している人たちは、その”地”すら踏むことができません。

皆さんはFPSで強くなりたいと思うなら、Call Of Dutyを買いますよね? プレイステーション5を買いますよね? 珍しいポケモンが欲しいなら課金しますよね? ではなぜ、自分の未来に課金という投資を避けるのでしょう? ゲームはやり直しができるからですか? 単価が安いからですか? そんなこととパイロットになることを同系列に語る時点で、センスの欠片はないのです。

実機座学講習を終えた訓練生と担当スタッフ
JA3689の前で講習を終えた訓練生と代表

実機座学講習を終えて。この経験に辿り着けたのは、行動した結果です。

Special Thanks

ご協力いただいた皆様へ

今回、実機を使った座学講習という貴重な機会をご提供いただいた株式会社AGLの高崎様をはじめ、多くの方々のご協力とご理解によって、この経験を実現することができました。心よりお礼申し上げます。

高崎様は、昨今の航空業界が抱えるパイロット不足という課題に深い理解をお持ちであると同時に、これから夢を追いかけようとする若年層の姿に、惜しみないエールを送ってくださいました。私たちが日々向き合っている課題を、同じ目線で理解し、後押ししてくださる存在がいることは、何よりの励みになります。

弊社も、このご厚意に応えられるよう、航空業界が抱える課題の解決に向けて、引き続き邁進して参ります。今回の経験が、一人でも多くの訓練生にとって、パイロットという夢への確かな一歩となることを願っています。

ご案内

なお、この実機を使った座学講習は、すでにお申し込みいただいた方から順次ご案内しております。現地に集合できる方のみが対象となり、旅費・宿泊費はご自身の負担となります。また、参加にあたり追加費用が発生する場合としない場合がございますが、参加されなかった、あるいは参加できなかったことを理由とした値引き・返金等の対応は一切ございません。

体験飛行はございません。また、お申し込み時期や契約形態によっては対象外となる方もおられます。ご希望の方には、別途、別料金にてご案内差し上げます。

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この記事の著者

谷口 一貴

谷口 一貴

株式会社SMART FLIGHT 代表取締役

元海上自衛隊潜水艦乗り。航空学生を3度受験するも合格叶わず。退官後に単身渡米し操縦免許を取得。自身の飛行時間は200時間ながらも、カナダ・アメリカ・オーストラリア・ニュージーランド・フィリピン・マレーシア・シンガポールを含む世界100校以上のフライトスクールを直接視察。海外訓練の費用メリットが帰国後の書換や免許取得後のコスト構造で消えるという現実を自ら経験し、さらにパイロット不足の本質的な原因が「免許制度と採用現場の乖離」にあることを現場で確認。訓練から就職まで一貫して設計するトータルコーディネートの必要性を確信した。現在までに30回以上のカナダ渡航を重ね、航空会社・フライトスクール・空港関係者との信頼ネットワークを構築。累計40名以上の訓練生を送り出し、国内外の航空会社で活躍するパイロットを輩出している。カナダのビザ制度にも精通。

Last Updated: 2026.09.22

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