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30歳過ぎてからカナダでパイロットとして働く現実的なルート解説

パイロット留学
30歳を過ぎてからカナダでパイロットとして働くための現実的なルート

35歳でも遅くない
正しい設計とカナダの移民制度

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「もう30歳を過ぎているけれど、今からパイロットを目指しても間に合うのか」——弊社に届く相談の中でも、特に多い問いの一つです。

結論

30歳を過ぎても、道はあります。ただし、設計しなければ、その道は1年ごとに細くなっていきます。

2026年、カナダはパイロットを移民の優先職種に指定し、11月3日からは移民の選抜の点数の付け方も変わりました。制度は、確かに追い風です。しかしその追い風を受けられるかどうかは、年齢ではなく設計と行動で決まります。この記事では、30代からカナダでパイロットとして働くための現実的なルートを、制度の数字とあわせて解説します。

  1. 移民の点数のうち「年齢」は、30歳を過ぎると毎年減っていく
  2. カナダで教官として1年働けば、その分を取り返せる
  3. 急ぐべきは「始めること」であって、「早く終わらせて帰ること」ではない

前提——カナダはパイロットを移民優先職種に指定している

まず、この記事の土台になる制度に軽く触れておきます。2026年2月、カナダ移民局(IRCC)は経済移民の選抜制度Express Entryの優先カテゴリーに輸送職種を新設し、その対象にパイロット(NOC 72600)を名指しで含めました。

  • 対象職種NOC 72600には、操縦教官(Flying Instructor)が含まれる
  • 直近3年以内に通算12ヶ月以上の経験があれば、優先カテゴリーの対象になり得る
  • つまり、カナダで教官として1年働くことが、移民制度の入口につながる

30代からパイロットを目指す人にとって、この「教官の1年」がどれほど大きな意味を持つのか。それがこの記事の本題です。制度の詳しい中身と要件は「カナダがパイロットを移民優先職種に指定」で解説しています。

30歳から回り始める「年齢の時計」

Express Entryでは、学歴や語学力、職務経験などを点数化した合計点(CRS)で選抜が行われます。その中で、自分の努力ではどうにもならない項目が一つあります。年齢です。

年齢独身配偶者あり
20〜29歳110点100点
30歳105点95点
31歳99点90点
32歳94点85点
33歳88点80点
34歳83点75点
35歳77点70点
36歳72点65点
37歳66点60点
38歳61点55点
39歳55点50点
40歳50点45点
41歳39点35点
42歳28点25点
43歳17点15点
44歳6点5点
45歳以上0点0点

出典:IRCC「Comprehensive Ranking System (CRS) criteria」(2026年11月時点)

20代は満点の110点。30歳を過ぎると、1年ごとに5〜6点ずつ減っていきます。35歳で77点、40歳で50点、そして41歳からは毎年10点前後ずつ落ちていきます。

ここで見落とされがちなのが、時間差です。訓練を始めてから、教官として12ヶ月働き終えて申請できる状態になるまでには、最短でも2年半〜3年かかります。つまり、選抜で使われるのは訓練を始めた年齢ではなく、その2年半〜3年後の年齢です。

32歳で始めれば、申請するのは35歳前後。33歳で始めれば、36歳前後。

「もう少し考えてから」と1年迷うたびに、申請時の年齢点は5〜6点ずつ削られていきます。時計は、始めた日からではなく、迷っている今も回っています。

11月3日の改定——教官の1年が「点数」になる

2026年11月3日から、Express Entryの点数の付け方が変わりました。新たに、カナダでの職務経験と職務オファーを評価する項目が設けられ、賃金水準の高い職種(高賃金職種)に追加の点数が付くようになったのです。

そしてIRCCが公表した高賃金職種のリストで、パイロット(NOC 72600)は「全国平均の賃金の1.5倍以上、2倍未満」の区分に入りました。

カナダで12ヶ月以上働いた経験

+40点

これまでの勤務年数の点数に、高賃金職種の追加点が上乗せされます。

職務オファーがある場合

70点

LMIA(労働市場影響評価)は不要になりました。経験とオファーは両取りできず、高い方が採用されます。

ここで大事なのは、評価が個人の給与ではなく「職種」で決まることです。教官の給与がエアラインのパイロットより低くても、職種が72600である以上、同じ区分として扱われます。

カナダで教官として働いた場合の点数

カナダでの教官経験独身配偶者あり
12ヶ月未満(オファーのみ)70点70点
1年40+40=80点35+40=75点
2年53+40=93点46+40=86点
3年64+40=104点56+40=96点

勤務年数の点数+高賃金職種の追加点(40点)。出典:IRCC「2026 Changes to points for Canadian work experience and job offers」、IRCC「High-wage occupations」

前の章の表を思い出してください。35歳・独身の年齢点は77点で、20代より33点低い。

しかしカナダで教官として1年働けば、勤務年数40点+高賃金40点=80点が乗ります。年齢で失った分を、教官の1年で取り返して、なお余りが出るのです。

20代は年齢点が満点なので、ほかの道でも点数が足りることがあります。30代にとっては、この「教官の1年」が、年齢の不利を埋める最も確かな手段です。

※高賃金職種の追加点は、カナダ国内での職務経験だけが対象です。日本など国外での経験には付きません。また、CRSの合計点には語学力や学歴なども含まれ、招待されるかどうかは選抜回ごとの基準によります。点数が上がることは、招待や永住権を保証するものではありません。

30代のための3つのルート設計

年齢の時計と制度の数字を踏まえると、30代の設計で大切なのは「全部の資格を揃えてから働く」ことではなく、いつ教官として働き始め、時計を味方につけられるかです。ここでは、考え方の異なる3つのルートを並べます。

ルート1:フル設計
PPL → Night → CPL → Multi → IFR → 教官

最初から多発・計器まで揃えるので、教官以降のチャーターやエアラインへの選択肢が最も広い設計です。

一方で、教官として働き始めるまでの費用と期間は最も大きくなります。

ルート2:教官先行設計
PPL → Night → CPL → IFR(単発)→ 教官(Class 4)→ 働きながらMulti → 多発で計器を取り直す

Multiを後回しにして、先に教官として働き始める設計です。新人の教官(Class 4)が教えるのは主に単発機なので、Multiがなくても働けます。教官として1年以上働きながら並行してMultiを取得し、Multi+IFRになれば、その後のチャーターやエアラインへの転職も選択肢に入ってきます。

ただし、カナダの計器飛行証明は実地試験を受けた機体で区分が決まります。単発機で取った計器(Group 3)は単発機限定のため、全機種で使える区分(Group 1)にするには、多発機で計器の実地試験をもう一度受ける必要があります。手間ではありますが、自分の給与で進められる手間です。

ルート3:最小設計
PPL → Night → CPL → 教官

究極の、極端なやり方です。計器もMultiも後回しにして、最短で教官になります。狙うのは、大規模校ではなく、規模の小さいフライトスクールです。

大規模校は応募が集まるため、教官の採用条件が高く設定されていることがあります。一方でカナダのフライトスクールは、場所によって自家用操縦士を目指す訓練生向けの教官を積極的に採用するところもあります。そうした学校を狙えば、最小の資格でも教官としての道が開けます。

計器もMultiも、働き始めてから一つずつ積み上げていくことになります。

ルート3は、あえてレイヤーを下げる戦略です。資格を積み上げて上の職場に合わせるのではなく、今の資格で雇ってくれる職場に合わせる。

30代にとっては、その分だけ早く教官になり、年齢の時計と制度の時計を同時に味方につけられる、ということでもあります。

35歳で挑戦した場合のモデルケース

では実際に、35歳で挑戦を始めた場合を考えてみます。

  1. 35歳カナダで訓練開始PPLから教官資格まで。訓練期間は18ヶ月〜24ヶ月が目安です。
  2. 36〜37歳教官として就職PGWP(卒業後就労許可)で、最大3年間カナダで働けます。教官として12ヶ月働いた時点で、移民の優先カテゴリーの経験要件に届き、点数にも教官の1年が乗ります。
  3. 39歳前後総飛行時間1,500時間を超える教官として毎日飛び、教えることで、飛行時間は積み上がっていきます。

35歳で始めても、39歳前後。教官として3年間しっかり飛べば、1,500時間は十分に超えてきます。

1,500時間が見えてくれば、そこからATPL(定期運送用操縦士)を目指すこともできます。チャーター、Medevac、地域エアラインと、選択肢は一気に広がります。ATPLについては「ATPL(定期運送用操縦士)とは何か|エアラインへの道を切り拓く」で詳しく解説しています。

そして、そこまでの経歴があれば、日本で働くことも十分に射程圏内に入ってきます。

35歳は、遅くありません。遅いのは、35歳のまま迷い続けることです。

就職率は「確率」ではなく「行動指標」

私は「就職率」という言葉が大嫌いです。それでも、ここではあえてこの言葉を使います。

やるべきことをきっちりとやり、覚悟を持てば、就職率という言葉に置き換えて、60%とも言えれば70%とも言えるでしょう。そして、挑戦すればするだけ、この数字は大きくなっていくことでしょう。

ただし、これは確率ではありません。行動指標です。

そしてこれは、あくまで“行動した人”にのみ当てはまる言葉であり、動き始めていない人には0%であることを、付け加えさせてください。

ここまで見てきた通り、制度はすでに味方についています。パイロットは移民の優先職種に名指しされ、教官の1年は点数にもなる。当たり前のことを当たり前にやれば、道は拓けてきます。

それなのに、就職率やライセンスの取得率という数字に、自分の未来の責任を委ねているうちは、何も始まりません。就職率という言葉の正体については「パイロットの就職率のリアルと現場の本音」で詳しく書いています。

一番ダメなのは「早く終わらせて帰る」考え方

30代の方から相談を受けていて、最も危ういと感じる考え方があります。

一番ダメな考え方

「もう35歳だから、とにかく早く訓練を終わらせて、帰国して書き換えて働く」

年齢に焦る気持ちは分かります。しかし、ここまで読んでいただければ分かる通り、急ぐべきなのは「始めること」であって、「終わらせて帰ること」ではありません。2つの道を並べてみます。

早く終わらせて帰る

  • 37歳前後で、最低限の飛行時間の事業用操縦士免許を持って帰国
  • 日本での書換えに、さらに費用と時間がかかる
  • 実務経験のないまま、若い候補者と同じ土俵に立つ

カナダで飛んでから考える

  • 教官として給与を得ながら、飛行時間を積む
  • 39歳前後で1,500時間を超え、ATPLも視野に入る
  • カナダに残るか、日本に帰るか、選べる立場になる

同じ「35歳からの挑戦」でも、行き着く場所はまったく違います。焦って近道を選べば、その皺寄せは確実に自分自身に返ってきます。

将来、日本に帰りたい人へ

「カナダに残るつもりはない。いずれは日本で働きたい」——そう考えている30代の方こそ、ここまで書いてきたルートを選ぶべきです。

30代でライセンスだけを持って帰国しても、日本の採用市場では、若い候補者と同じ土俵に立つことになります。しかも、年齢では不利な側です。そこで差をつけられるのは、ライセンスの有無ではなく、どれだけ飛び、どんな実務を積んできたかです。

カナダで教官として飛び、時間と経験を積んでから帰る。そうしなければ、「ライセンスはあるけど働き口がない、経験がない量産型パイロット」になってしまいます。

一つ付け加えます。3つのルート設計で紹介した最小設計は、「最初を軽くする」ための設計であって、「最後まで軽いまま帰る」ための設計ではありません。

日本で働くことを目指すなら、カナダで教官として働いている間に、Multiと多発機での計器飛行証明まで取り切ってから帰国する。この順番を守ることで、帰国後の選択肢が大きく変わってきます。

事業用操縦士免許だけでは就職につながらない現実については、「事業用操縦士免許で就職できないリアル」で詳しく書いています。

ここまで読んでいかがでしたか

ここまで話してきた内容は、40歳を超えていたら可能性がない、50を過ぎているともうダメだとか、そういう単純な話ではありません。

また、制度の有効活用として、有資格者(現役のパイロット)も対象になります。ただ気をつけないといけないのは、加点方式は少し変わるため、あくまで経験上の優遇があるということを付け加えておきます。

30代の挑戦に必要なのは、年齢を嘆くことでも、近道を探すことでもありません。制度の数字を知り、自分の現在地から逆算して、拾われるルートを設計すること。そして、その設計に沿って動き始めることです。

Fast is slow, slow is fast.

急ぐときこそ慎重に、余裕があるときほど早く動け。ここで言う慎重さとは動作の質のことであって、開始を遅らせる免罪符ではありません。

Slow is so slow, so slow is too late.

年齢の時計は、迷っている今も回っています。35歳は、遅くありません。遅いのは、動かないまま時間だけが過ぎていくことです。

あなたの年齢と現在地から、ルートを設計します

フル設計か、教官先行か、最小設計か。カナダに残るのか、日本に帰るのか。年齢と現在地によって、正しい設計はまったく違います。「就職できますか」への回答はありません。「どう設計するか」への回答は、あります。

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世界100校以上を視察した代表・谷口が直接お答えします。

この記事の著者

谷口 一貴

谷口 一貴

株式会社SMART FLIGHT 代表取締役

元海上自衛隊潜水艦乗り。航空学生を3度受験するも合格叶わず。退官後に単身渡米し操縦免許を取得。自身の飛行時間は200時間ながらも、カナダ・アメリカ・オーストラリア・ニュージーランド・フィリピン・マレーシア・シンガポールを含む世界100校以上のフライトスクールを直接視察。海外訓練の費用メリットが帰国後の書換や免許取得後のコスト構造で消えるという現実を自ら経験し、さらにパイロット不足の本質的な原因が「免許制度と採用現場の乖離」にあることを現場で確認。訓練から就職まで一貫して設計するトータルコーディネートの必要性を確信した。現在までに30回以上のカナダ渡航を重ね、航空会社・フライトスクール・空港関係者との信頼ネットワークを構築。累計40名以上の訓練生を送り出し、国内外の航空会社で活躍するパイロットを輩出している。カナダのビザ制度にも精通。

Last Updated: 2026.11.02

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