日本でパイロットとして働くためには何が必要なのか。
実務ガイドを解説
外国ライセンスの書き換え制度は日本でも整っていますが、取得した操縦免許をそのまま書き換えられるわけではありません。
こちらの 海外で訓練して日本で就職するまでの流れ を参考にしてください。
また、ICAO加盟国であっても安全性・信頼性の観点から書き換えができないこともよくありますので、事前に留学先の国が対象かどうかを確かめておきましょう。
外国ライセンスの書き換え制度
① 書き換え対象となるライセンス
日本のJCABが認める代表的な外国免許は、FAA(アメリカ)、TCCA(カナダ)、EASA(欧州)など。
これらはICAO基準に準拠しており、審査手続きが比較的明確。
② 書き換え手続きの流れ
申請 → 学科試験 → 実技試験の順に実施される。
すべてJCAB基準で判定され、外国の訓練記録・試験科目が日本基準と一致していることが求められる。
③ 提出が必要な書類
訓練記録・飛行ログ・教官署名付き証明書・医療証明書・英語証明など。
提出書類に不備があると再試験や審査遅延の原因になる。
④ 書き換えが認められにくいケース
ICAO非準拠、訓練時間不足、ログの署名欠落、機体認証不備など。
特に安全管理体制が不明確な国のライセンスは審査が通りにくい。
いくら航空文化の進んだ国で操縦免許を取得しても、その経験が日本でそのまま使えるということではありません。
書き換えや国内で飛行するためには、事前に得ておくべき経験が必要となります。
特に国内で就職を目指す際は、規定ギリギリの飛行時間や訓練内容では弾かれることも多く、経験の「中身」が非常に重要になります。
実際に求められる飛行経験と条件
① 各ライセンスで求められる最低飛行時間
PPL(自家用)・CPL(事業用)・IR(計器飛行)など、それぞれに定められた最低飛行時間を満たす必要があります。
ただし「最低時間=十分な経験」ではなく、実際は+50〜100時間多く積む方が安全・信頼の面で有利です。
② クロスカントリー・夜間・計器飛行の実績
日本の航空法では、書き換え審査時にクロスカントリー・夜間飛行・計器飛行の実績が厳密に確認されます。
これらが不足していると再訓練が必要になる場合があります。
③ 教官署名・機体番号・飛行ログの管理
書き換え審査では、飛行ログブックに教官署名・機体番号・飛行時間が明記されていることが求められます。
特に海外スクールではサイン漏れや記録不備が発生しやすいため、訓練中から確認することが大切です。
④ 経験の「質」と信頼性
単に飛行時間を稼ぐだけでなく、どんな環境で・どんな教官と・どんな条件下で飛んだかが重視されます。
信頼性の高い訓練環境で得た経験は、書き換え審査や就職選考での評価に直結します。
まもなく解禁。
書き換えをする上でもしかしたら一番重要かもしれないのが、留学前にその国が書き換えの対象であるか、実績があるかを確認することです。
ここで大切なのは、いくら実績があり制度上は可能でも、それが「今も継続しているのか」という点です。
法制度上はICAO加盟国であれば可能と航空局も記載していますが、それは制度上の話であり、実務で可能である保証ではありません。
書き換えを成功させるための準備
① 書き換え対応国・実績の確認
訓練前に必ずJCABへの書き換え実績がある国を選ぶこと。
公式に「可能」と書かれていても、実際には書き換えが停止中または審査が厳格化されているケースもあります。
最新情報を在外公館・航空局サイトなどで確認しましょう。
② 訓練記録の整備と翻訳
飛行ログや訓練記録は、英語での記載と教官署名が必須です。
記録の欠落・重複・未署名は審査遅延や再試験の原因になります。
帰国前に全てのログをチェックしておきましょう。
③ 英語力・身体検査の事前準備
ICAO英語レベル4以上と航空身体検査(第一種)は、書き換え審査の前提条件です。
渡航前に両方を確保しておくことで、帰国後の手続きがスムーズになります。
④ 日本の航空法・気象・航法の学習
書き換え試験では、日本独自の航空法規・運航基準・気象知識が問われます。
海外訓練中から日本の航空知識を補強しておくと、審査や面接でも有利になります。
ここからは書き換え後の就職ルートについて触れておきますが、ここでくれぐれも誤解がないように伝えておきたいのが、「就職率◯%」などをうたうフライトスクールをまず信用しないでください。
よく読むと「パイロットとしての就職」とは書かれておらず、「国内エアライン就職率70%以上」など曖昧な表現を見受けますが、そもそも何を根拠に70%なのかも不確かです。
皆さんにはこれからパイロットを目指し、お客様の安全を守る立場として、正しい情報と正しい認識を持って航空業界へ臨んでほしいと思います。
弊社の経験上、本当に就職実績の高いフライトスクールほど「就職率」を書いていません。
それはなぜか。
「就職率で入学するような考えの浅い人を空に出したくないから」です。
パイロットという職業は責任と覚悟が伴います。
「就職率70%なら自分も大丈夫」と、挑戦する前から安易に土俵に上がった気になってしまうような考え方では、過去もこれからも必要とはされません。
書き換え後の日本就職ルート
① 主な就職先の種類
JCABライセンスを取得後、日本国内での就職先は主に以下の3つに分類されます。
① エアライン(定期便)、② 地方航空会社・コミューター、③ 運航支援・チャーター・遊覧。
それぞれ求められる経験・英語力・人間性が異なります。
② 採用プロセスと評価項目
書き換え後は書類選考 → 英語面接 → 技能試験 → シミュレーター評価が基本。
エアラインは単に操縦技術だけでなく、CRM(Crew Resource Management)や人間性も重視します。
③ 契約形態と給与レンジ
大手エアラインでは正社員登用が主流ですが、地方・チャーターでは契約社員が中心。
初任副操縦士の年収はおおよそ500〜800万円前後。
経験・タイプレーティング・英語力により変動します。
④ OJT・ライン訓練の流れ
採用後は座学・シミュレーター訓練 → 路線同乗(Line Training)を経て副操縦士へ。
書き換え組は特に日本の運航手順や管制英語の習得が早期昇格の鍵になります。
ここでは、海外で操縦免許を取得して日本で就職を目指す方から特によく寄せられる質問をまとめました。
書き換え制度や就職に関する疑問点は多くありますが、以下の内容を押さえておけば大きな方向性の誤りは防げます。
よくある質問(FAQ)
どちらもICAO基準に準拠しており、訓練記録や試験制度が明確なため、審査時の整合性が取りやすい特徴があります。
審査途中で追加資料を求められるケースもあるため、書類の正確さがスピードを左右します。
また国内就職では面接やシミュレーターで英語対応が求められるため、英語力=安全性と判断力と見なされる傾向があります。
一時的な原因(視力・血圧・体重など)は改善可能ですが、慢性的・先天的な疾患は操縦資格に影響する場合があります。
ただし、国内エアライン就職を目指す場合はJCAB基準での再訓練・書き換えが必要になるため、訓練国選びが最も重要です。
弊社は常日頃から話していることですが、本気でパイロットを目指したいのであればフィリピンでの訓練は絶対にやめてください。
フィリピンという国そのものを否定するわけではありませんが、成熟していない環境での操縦訓練はキャリアを確実に無駄にします。
詳細はこちらのリンクを参照してください:
https://pilot-ryugaku.com/never-do/
⚠️ フィリピン免許に関する注意喚起
① 書き換えは制度上可能でも実務ではほぼ不可能
フィリピンでは「日本で書き換え可能」と宣伝されているケースがありますが、実際には過去5年以上まともに通った事例がほとんどありません。
訓練記録や機体運用、監査体制の不備が理由で、JCAB審査を通過できないのが現実です。
② 訓練品質・安全基準の問題
フィリピンの多くのスクールでは、クロスカントリー・夜間・計器飛行の時間がICAO最低基準を満たしていないことがあります。
一見安価に見えるプログラムも、内容が軽く、後に再訓練費用が倍以上かかるケースが後を絶ちません。
③ 安全文化と法令遵守の意識差
安全や整備に対する意識が低く、訓練中の事故・機体トラブル・保険未整備などの報告も少なくありません。
「飛べれば良い」という環境は、日本のエアラインが求める安全文化と真逆です。
④ フィリピン免許はキャリアに不利
多くの航空会社・訓練機関ではフィリピン免許を評価対象外としています。
面接や書類審査で不利になるだけでなく、「なぜその国を選んだのか」と判断力を疑われるケースもあります。
⑤ 結論:安さより「信頼」を選ぶべき
安い訓練=危険な訓練と考えてください。
パイロットに求められるのは「安く飛ぶ力」ではなく、「安全を守る判断力」です。
短期的なコストよりも、安全性・国際的信頼性・書き換え実績を優先してください。
✈️ まとめ ― 正しいルート選択がキャリアを決める
パイロットを目指す上で最も大切なのは、どの国でどんな環境で訓練を受けるかという判断です。
そしてもう一つ忘れてはいけないのが、「制度上できる」ことと「現実に通用する」ことは全くの別物だということです。
日本就職を本気で目指すなら、訓練国とライセンス制度を正しく理解し、信頼できる訓練環境を選ぶことが最短であり、最も安全な道です。
- ① 国選びが全てを決める:書き換え対象外の国での訓練は実績になりません。最初の判断がキャリアを左右します。
- ② 「安さ」より「信頼性」:再訓練や再申請にかかるコストを考えれば、最初から安全と実績を選ぶことが結果的に得です。
- ③ 「資格」より「責任」:免許はゴールではなくスタート。安全と責任を背負う覚悟があるかが、真の基準です。
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