2026年のPGWPは「プログラム」ではなく「フルタイム」で決まる
カナダのポスグラ(Post Graduate Work Permit:仮就労許可)の制度は広く知られていますが、ここ数年運用のルールが大きく変わってきました。 特に大きな変更で、かつネット上に「ポスグラは取れない」「カナダはビザが取れない」などの間違った情報が蔓延した原因の理由でもある、 「フルタイム」という厳格な基準が設けられたことが言えるでしょう。
これまではプログラム単位でポスグラの申請が出来たため、フライトスクールなどの場合、18ヶ月で2年間、24ヶ月の最大3年のポスグラを取ることができましたが、 2026年(運用は2024年ごろから)時点では、プログラム単位ではなく「フルタイム」という基準が設定されています。
これまでは2年や3年のビザが出ていましたが、これらも原則1年更新など、留学生に対する厳格な管理が行われてきています。 この記事では「フルタイム」の定義や対応策を深掘りしていきます。
2026年以降のPGWPで最も重要なのは、 「何ヶ月のプログラムか」ではありません。 就学期間を通してフルタイム要件を満たし続けているか が判断軸になっています。
ポスグラの前提条件は2層ある
ポスグラの前提条件は大きく分けてIRCCの運用基準とフライトスクール側の運用基準の2つに分けられます。
大学、カレッジなどもIRCCの基準をベースに、それらの基準や定義から漏れないようにカリキュラムやプログラムの設定を行いますがフライトスクールも例外ではありません。
特にフライトスクール卒業後にポスグラを取得する場合はその学校がDLI( DLI公式リスト )認定校出なければそもそも始まりません。
PGWP(ポスグラ)の話をする前提として、まずDLI認定校であることが絶対条件です。 ここが欠けている時点で、どれだけ真面目に訓練しても制度上スタートラインに立てません。
DLI認定校がなぜ大事なのかはこちらの記事を参考にしてください。
IRCCが基準を設けて、それをそのまま実務で運用するのではなくフライトスクール側のDLIの有無やIRCCからの評価も重要になるためどちらか片方がかけると成立しない制度なのです。
フライトスクールにおける「フルタイム」の正体
次にいよいよ「フルタイム」の定義について解説していきますが、そもそも留学生はビザの取得の時点でフルタイム就学が明記されています。
6ヶ月未満の就学や訓練はフルタイムにカウントされないので、よくある誤解で6ヶ月以上がフルタイムではと思いますが、これは実務の運用をは少し表現や捉え方が変わります。
6ヶ月未満はあくまでビザの対象にならない就学や訓練は観光ビザ(ETA)で行うことができ、これから解説する「フルタイム」の内容を受けるにしても6ヶ月未満はビザが必要ありません。
では本当の意味で「フルタイム」とは何を示すかというと「週に15時間以上の就学」を示します。 フライトスクールでいう操縦訓練、座学、追加補修指導などです。
フライトスクールにおけるフルタイムの基準は、単なる「通っている感」ではありません。 週15時間以上の訓練・指導を受けていることが判断軸になります。
フライトスクールでいう操縦訓練、座学、追加補修指導などです。 これらは自己申告ではなくフライトスクール側に厳格にデータ管理をされた内容を元に証明されなければなりません。
また、この15時間の根拠に使われるのが「支払い履歴」です。操縦訓練に何時間支払って、座学に何時間分支払ったのかを明確に示さなければなりません。以下は簡易なイメージです。
週5日 × 1日2時間 = 合計10時間
週5日 × 1日1時間 = 合計5時間
10時間 + 5時間 = 15時間
ここで重要なのは質の高い訓練を提供するフライトスクールほど細かな時間管理と請求が発生することがあります。元々パッケージに含まれた料金ではあるので都度の請求ではなくデポジットから消化されるなど運用方針はそれぞれですが、フライトスクール側のパッケージ内容はそれらを満たした基準となっています。
真面目な訓練生は「支援される」
当たり前のことなのですが、真面目な訓練生は支援されます。 これはフライトスクールに限った話ではありません。
留学のように移民制度と結びついた教育政策には、そもそも 「真面目で優秀な人材を育て、確保する」 という前提があります。
現地教官からの一次情報をもとに整理すると、 フライトスクールだけでなく、語学学校や大学も、 どれだけ多くの優秀な学生を輩出しているかを 移民局から継続的に評価されています。
留学制度は「誰でも受け入れる仕組み」ではありません。 真面目に取り組む人材を育て、残すための制度です。
これはDLIやPALの記事でも解説しましたが、 訓練生が真面目でなければ、翌年のPAL発行可能枚数が減らされたり、 最悪の場合はDLIの取り消しなどにつながる可能性もあります。
そのためスクール側としても、 真面目な訓練生には手厚く支援する必要があります。 これは甘やかしではなく、 スクール・訓練生・カナダ(移民局)との バランスを保つための合理的な判断です。
ここでよくある誤解が、 「自分は手厚くされていない=放置されている」 という認識です。
現実は「放置」ではありません。 選別が行われているのです。
真面目な訓練生は、 就職や将来の給料を先に考えるのではなく、 まずは目の前の訓練に集中し、 一つひとつ成功体験を積み重ねることで道を切り開いていきます。
一方で選別される訓練生は、 うまくいかない原因を制度やスクールのせいにし、 自分の立ち位置を客観的に把握しようとしません。
真面目に当たり前のことを継続して取り組む姿勢こそが、 「フルタイム」を時間だけでは測れない本質的な定義であり、 結果としてそれが時間や記録に現れてくるのです。
真面目な訓練生には、 スクール側が積極的に関与し、 就職情報の提供やポスグラ申請の支援などを行います。 これはフライトスクールに限らず、 どの世界でも共通する原理だと言えるでしょう。
2026年の新しいリスク|ビザは「常に見られる」
これまで長期プログラムであれば2年や3年のビザが一括で出る、という認識を持っている方も多いと思いますが、 2026年時点ではこの前提が通用しなくなっています。
18〜24ヶ月などの長期プログラムであっても、最初は12ヶ月前後のStudy Permitが発給され、 途中で更新(延長)申請が必要になるケースが増えています。 これは制度が変わったというより、運用の厳格化と捉えるべきです。
2026年は「最後にまとめて評価される」のではなく、 途中でも常に見られる前提で動く必要があります。
更新時に見られるポイントはシンプルで、 フルタイムを継続しているか、 進捗が合理的か、 そして学校側の記録(出席・請求・ログ)が整合しているかです。
多くの人はPGWP(ポスグラ)審査だけをゴールにしがちですが、 現実はその前にビザ更新という関門があり、 ここでつまずくケースも出てきています。
結局、2026年は「最後だけでなく途中も評価される」時代です。 だからこそ、フルタイム継続と記録管理、そして自己オーガナイズが重要になります。
だからエージェント介在は合理的
ここまでの内容を踏まえると、ポスグラやビザは「制度を知っている」だけでは成立しないことが分かるはずです。 重要なのは、フルタイム要件や記録の整合性など、条件を継続して満たし続けることです。
しかし現実には、多くの訓練生が自己オーガナイズを苦手とし、 進捗管理や記録管理を後回しにしがちです。 結果として、フルタイム要件を無意識に下回ったり、 気分や天候などを理由にペースが崩れたりします。
2026年のポスグラ設計では、「努力するつもり」では足りません。 継続して条件を満たし続けられる運用体制が必要になります。
ここで誤解されやすいのですが、エージェントの役割は学校紹介や書類代行ではありません。 本質は、フルタイム維持・進捗の可視化・記録の整合性といった要件を、 設計どおりに回すための調整役です。
- フルタイム要件を満たす学修・訓練計画の管理
- 進捗の可視化と軌道修正
- スクール側との情報連携
- 訓練生への現実的な修正指示
これは甘やかしではなく、制度事故を防ぐためのリスク管理です。 放置すれば、途中でビザ更新やポスグラ申請で不利になる可能性が高まります。 一方、管理と調整が入れば、スクール側の負担が減り、 訓練生も脱落しにくくなります。
結局、エージェント介在は依存ではありません。 設計と管理を外注するという意味で合理的なのです。
俯瞰すると見えてくること
一方で、パイロット留学そのものを忌避し、 「海外免許は使えない」「パイロット留学は意味がない」 「日本の訓練が一番だ」 と語る人たちが、今も一定数存在します。
しかし、こうした主張の多くは、 制度の厳格化や管理体制の強化を否定材料として捉えている点で、本質を取り違えています。
カナダが行っているのは、放任ではなく、 厳格な管理と継続的な審査を前提とした教育体制の構築です。 フルタイムの定義、進捗管理、評価、就労・移民制度との接続。 これらを一体として設計しているからこそ、 「真面目にやる人間は評価され、やらない人間は脱落する」構造が成立しています。
管理が厳しいことはマイナスではありません。 厳格な基準に晒され、継続して評価される環境こそが、 技術と姿勢の証明になります。
もし日本が本当に航空大国であり、教育大国であるなら、 私立大学の航空学科卒業生の就職率が40%前後にとどまることも、 航空大学校の訓練進捗率が6割前後で頭打ちになることも、 説明がつきません。
ましてや、世界中から訓練生が集まり、 国際的な教育拠点として機能しているはずです。 現実はそうなっていません。
これからは、カナダのような航空大国であり、 かつ教育先進国でもある国で、 厳格な管理下の訓練を修了できたこと自体が、一つの権威となり、技術と姿勢の証明になっていくでしょう。
問題は「どこで免許を取ったか」ではありません。 どの環境で、どの基準に晒され、継続して評価を受けてきたかです。
まとめ|制度に合わせるだけでは「世界で通用するパイロット」にはならない
ここまで書いてきた内容は、カナダが特別な国だから成り立っている話ではありません。 世界各国で同様に、教育・就労・移民制度の運用は厳格化され、 途中経過を含めて継続的に評価する仕組みへと移行しています。
それと同時に、パイロットという職業の重要性は、今まで以上に注目されています。 人材不足という単純な話ではなく、 「世界で通用するパイロット」が特に求められる時代になっているということです。
その中で必要とされるのは、単に制度の要件を満たすことではありません。 フルタイムの定義、進捗管理、評価基準といったルールを理解したうえで、 環境の変化や想定外の状況にも柔軟に対応できる人格が問われます。
これからの時代に求められるのは、 制度に合わせる人ではなく、 制度を理解したうえで適応し続けられる人です。
ポスグラやビザ、就職や永住権はゴールではありません。 それらは、世界で通用するパイロットになるための過程にすぎません。
覚悟を持って継続できる人にとっては、道は閉ざされていません。 一方で、制度だけに期待し、自己管理や柔軟な対応を欠いたままでは、 どの国でも通用しなくなっていくでしょう。







